アジア経営学会

第10回(2026年度)研究奨励賞受賞論文

■受賞者

Chen Xin 京都大学大学院博士課程後期課程

■受賞論文

From China to the world: BYD’s distinctive path to internationalization in the NEV market.
『アジア経営研究』第31号(J-STAGEにリンク)

■審査委員会からの講評

本論文は,中国の新エネルギー車(NEV)メーカーBYDを対象として,その国際化プロセスを既存の国際化理論(OLIパラダイム,LLLフレームワーク,ウプサラモデル)との比較を通じて分析し,「Third-wave Emerging-market MNEs」という新たな概念を提示した意欲的な研究である。豊富な統計資料に加え,現地調査やインタビューを取り入れながら,中国企業の急速な海外展開の実態を丹念に追跡しており,挑戦的かつ実証的な研究姿勢は高く評価できる。また,本研究は,中国企業の国際化という近年重要性を増しているテーマに対し,新興国多国籍企業研究の発展可能性を示すものであり,今後の理論的・実証的研究へ発展する可能性を十分に備えている点も評価された。既存理論では十分説明しきれない現象に対して新たな視点を提示しようとする姿勢は,研究奨励賞にふさわしい将来性を有している。一方で,本研究はなお発展途上にあり,今後さらなる深化が期待される点も少なくない。特に,OLI理論を中心とする国際化理論の理解と理論構成については,より精緻な検討が望まれる。既存理論の位置づけや相互関係,新興国多国籍企業論との接続については,幅広い先行研究を踏まえた理論的整理が必要であり,新たに提示した概念についても,適用範囲や因果メカニズムを明確化することで,理論としての説明力と一般化可能性がさらに高まるものと期待される。以上より,本論文は理論的課題を残しつつも,挑戦的な実証分析として高く評価され,新興国企業の国際化研究の発展に寄与する将来性を有する研究であることから,研究奨励賞にふさわしい業績であると判断した。

なお,「内規」に基づき,受賞に至らなかった審査対象については開示しない。

2026年9月12日

アジア経営学会
学会賞・研究奨励賞審査委員会
委員長 田中 彰(京都大学)
副委員長 田畠 真弓(専修大学)