第8回(2024年度)研究奨励賞受賞論文
■受賞者
岩田知子 北海道大学大学院 博士課程後期課程
■受賞論文
「日系ドラッグストアの東南アジア進出:ツルハタイランドの事例研究」
『アジア経営研究』第 29 号(J-STAGEにリンク)
■審査委員会からの講評
本論文は,ツルハホールディングスおよびタイ子会社のツルハタイランドを事例として,ドラッグストアのグローバル・イノベーション・プロセスを明らかにしようとした研究である。
本論文を評価する点は次の3点である。第一に,研究期間がコロナ禍という制約にあったにもかかわらず,意欲的に実態調査を行い,ツルハタイランドの各部門のオペレーションに即して経営革新の実情を明らかにしたことである。第二に,理論と事例研究を往復させる堅実な学問的方法に基づき,知識吸収能力(ACAP)モデルを用いながら,事例研究から得られた知見をもとにその刷新を図ったことである。第三に,知識の同化・変換から深耕へというACAPモデルに対して,知識の融合から創造へという新たな国際的ACAPモデルを提起したことである。なお,これらに加えて,本論文は論旨の運びと叙述が極めて明快であることも付け加えておきたい。
もっとも,国際的ACAPモデルを支えるためには,現地で獲得される知識の独自性や,それと本国親会社から獲得される知識との葛藤や融合について,より多面的に把握する調査方法が求められるように思う。この点は,今後,著者による更なる研鑽を期待したい。
以上の評価に基づき,本論文がアジア経営学会研究奨励賞に相応しいものと判断した。
2024年9月14日
アジア経営学会
学会賞・研究奨励賞審査委員会
委員長 川端 望(東北大学)
副委員長 肥塚 浩(立命館大学)