第9回(2025年度)アジア経営学会賞受賞著作
■受賞者
韓金江 岐阜協立大学経営学部・教授
■受賞著作
『中国機械産業の技術発展戦略―工作機械・建設機械分野を中心に』,2024年,法律文化社
■審査委員会からの講評
本書は中国一般機械産業の,主に2010年代までの発展を分析したものであり,以下の3点を評価できる。第1に,中国の一般機械産業という,重要性に反してきわめて先行研究が少ない分野の研究であり,今後同分野における必読の先行研究となるであろうこと。第2に,一般機械のうち,広く工作機械・建設機械・農業機械を対象とし,国有企業・民営企業・外資系企業による外国技術の導入から外国企業のM&Aへと進む二段階のキャッチアップの過程を体系的に描き出したこと。第3に,3本の『アジア経営研究』掲載論文や他の学会員との共同研究を基礎としており,学会への貢献が大きいこと。以上である。
ただし,不満点も多い。第1に,工作機械・農業機械の研究の射程が2020年代まで及んでいない(しかもそのことを本書の限界として明示的にことわっていない)。第2に,世界有数の多国籍企業が出現している工作機械(2020年代)と輸出段階にとどまっている建設機械・農業機械(2010年代)の間の違いや,一般機械と他の工業部門との異同が検討されていない。第3に,工業化の型について本書で提起されている「閉鎖的自己完結型」「開放的自己完結型」「国際化型」という概念が先行研究を単に言い換えたものか,それを超えるものなのか,立ち入った検討が欠如している。とはいえこれらの点は著者の研究の発展性を示すものであるとも言え,中国機械産業へのより深い知識に迫れるよう,今後の発展をおおいに期待するものである。
以上から,小委員会は本書がアジア経営学会学会賞受賞に十分ふさわしいものであると判断する。
2025年9月13日
アジア経営学会
学会賞・研究奨励賞審査委員会
委員長 田中 彰(京都大学)
副委員長 田畠 真弓(専修大学)
